ヒューマンインタフェース学会研究会賞をいただけることになりました

5月に発表した指導学生との共同研究がヒューマンインタフェース学会の研究会賞に選ばれました(受賞はもう少し先ですが).大変光栄で,めっちゃ嬉しいです.

対象となった研究は「認知症のある高齢者に対し介護職員が用いる方便的欺瞞の分類」です.https://ci.nii.ac.jp/naid/40021912768/

介護の現場では,認知症のある利用者に対して,いわゆる「優しい嘘」が用いられることが多いんですよね.例えば夫が既に亡くなられている方が「夫にご飯作らないといけないから家に帰る」などとおっしゃったときに「ご主人は既に亡くなられてますよ」なんて言えないわけじゃないですか.だから,今日はここ(施設)に泊まって明日帰ろう?的な「方便」を使うわけです.

我々はその方便としての嘘を「方便的欺瞞」として,実際の介護の現場で働かれてる職員がどのようなシーンでどのようなタイプの方便的欺瞞を用いているのかを調査しました.調査方法が一つの特色なんですが,130名に個別のショートインタビューを実施しています.この辺り筆頭著者の辻さんがめちゃくちゃ頑張ってくれました.この130名のうち入職1ヶ月の1名を除く129名が「方便的欺瞞を用いている」と回答されていました.事例としてはのべ307ケース集まりました.興味深いのは,それぞれ方便的欺瞞が用いられたシーンと欺瞞内容のタイプのクロス表を作ってみると,シーンによって使われる頻度に偏りは見られるのですが,使われる方便的欺瞞のタイプには一貫性が見られないんですよね.要するにどんな方便的欺瞞を使うかは結局介護職員次第だということになります.

臨機応変な対応を求められる中で,一貫した対応を取るのは難しいとは思うのですが,方便の用い方を個人に任せられるという状況では,何かあった場合にその人の責任になります.そうなると利用者と職員の双方に不利益が発生するように思います.何事も「もしこんなことが起きたらどうする」的なことばかりでルールにがんじがらめにされるのはよくないと思うのですが,この辺りは研究としては整理しておく必要があるだろうと思います.

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