研究分野

環境を人間に合わせるための研究をしています

人間というものは融通が利く生き物です.「無理」ができます.そのため産業革命以降,機械でできない部分を人間が補うということが人間の役割になってきました.その結果,多くの問題が生じてきました.自分に合っていない姿勢で働く,自分に合っていない作業をする,など自分を環境に合わせるうちに,心身の健康に問題が生じます.ここでいう環境とは,物理環境だけではなく,社会環境も含みます.また,ここでいう健康の問題とは,身体的なものだけではなく心理的なものも含みます.これら問題を解決するひとつの考え方が「人を環境に合わせるのではなく,環境を人に合わせる」というものです.

 

ergonomics

 

環境を人に合わせるためには,人に影響する環境がどのようなものなのか,人への影響とはどのようなものなのか,どのようにすれば環境が人に合うのか,客観的に評価する必要があります.このようになにをどのように評価し,どのように変えていくのか,ということを考えるために学問があります.私は,以下の2つの学問領域を背景に,「環境を人に合わせる」ための研究を進めています.
 
▼人間支援工学(Assistive Technology Engineering)
その名の通り,人間を支援するための工学的アプローチによる研究です.特に障害のある人や高齢者の支援に対する技術利用について,心理学,工学,教育学を融合した先端学際的研究を進めています.これらの人々に対する支援ニーズの分析や発掘,最新の支援技術の動向把握,ならびに技術を利用した時の効果を科学的に検証することで,「誰もがその効果に納得して簡単に利用できる未来の技術」と「技術利用による福祉の構図」を提案することを目指しています.ここでいう技術は必ずしも先端的なものばかりではありません.障害のある人だけでなく,様々な困難を抱えるそれ以外の人々の生活環境へと利用を広げる意味でも,スマートフォンやタブレット端末などのむしろ普及の進んだ技術の応用が重要なアプローチとなります.これら汎用技術をどのように支援に利用するかという視点で,障害当事者と共にニーズを明らかにして技術の応用や評価を行いながら,現行の社会制度下でそれら技術を利用した支援環境を実現するための提案を行います.

▼適応認知行動学(Behavior Oriented Psychology)
従来の認知心理学の研究分野では,非常に制約された環境の中で,人間の認知・行動特性が調べられてきました.しかしながらこのような方法論では,条件統制により現象の因果関係が検討しやすくなる一方で,実際場面における人間の適応的な行動・認知特性を調べるのには不十分でした.また,近年の認知心理学の分野では,専門領域の細分化が進み,「重箱の隅をつつく」ような社会的に必要性の低い研究が増えてきているという問題が指摘されています.適応認知行動学では,実際行動場面において人間がどのように環境に対して適応的に行動するのかということに着目し,その認知行動特性について検討します.社会にはまだまだ多くの調べられるべき問題があります.適応認知行動学の研究分野では,それら問題の背景にある人間の認知・行動特性について検討することで,問題の解決につながる成果を上げるとともに,実際場面での人間の認知行動特性についての知見を得ることで,基礎学術にも貢献します.

最近の研究テーマ

  • テクノロジーによる能力拡張のための知的・発達障害のある人の能力評価
  • 発達障害のある大学生のキャリア・就労支援
  • 高等学校における支援が必要な生徒への学習・就労支援
  • 認知症患者におけるテクノロジーを活用した支援
  • 組織のレジリエンスを重視した医療事故防止のためのエラーと防止策の評価
  • 在宅医療における使いやすい医療機器の評価

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