職リハ学会に行ってきました

職リハ学会に行ってきました

8月29日30日に埼玉県立大学で開催された日本職業リハビリテーション学会第41回大会に参加してきました.
今回は「高等教育機関における発達障害学生へのキャリア形成支援の課題とインターンシップの有効性について(岡耕平・窪貴志・高橋亜希子)」発表してきました.

この研究では私は調査の企画と分析とまとめと発表の部分のみの参加で,実際の調査の遂行や企画の実施は共同発表者が行ったものです.

この研究は3つのパートで構成されています.
(1)全国の大学・短大での発達障害学生のキャリア支援に関する質問紙調査
(2)特色ある発達障害学生支援を実施している大学へのインタビュー
(3)発達障害学生を対象とした「ド短期インターンシップ」の実施とその効果

(1)では,全国の大学で発達障害を対象としたキャリア支援はほとんど実施されていないということがわかりました.実施しているところは,ちゃんと発達障害学生を組織として把握し,フォローできているという構図が明らかになりました.

(2)では,発達障害学生支援が上手くいっている大学の特色がわかりました.発達障害学生のかかえる困り感が(A)就学に関すること(B)人間関係に関すること(C)就職に関すること(D)メンタルに関すること,の4つにだいたい集約されることが分かりました.そして,これらがそれぞれ(A)教務担当(B)学生生活担当(C)キャリア支援担当(D)保健担当,の別々の部署で対応されていることが分かりました.結論としては,発達障害学生の支援が上手くいっているところの共通点としては,上記ABCDについて,情報共有ができているという事が分かりました.逆に,これらの「横串」がないと上手くいかないようです.そして,大きな規模の大学では「横串」として,4つの部署の情報を集約するような組織(例えば障害学生支援室等)が機能していることが分かりました.また,このような独立の組織をもたない大学においても,保健センターの「中の人」が中心となって,(システムとしてではなく)マンパワーで情報共有することができている組織は,うまく支援ができているという構図がわかりました(マンパワーでやるとその人がいなくなったら全部ダメになるのですが).

(3)では,在学中の発達障害学生を対象に5日間のド短期インターンシップを実施しました.インターンシップは発達障害学生と,企業の2方向にアプローチしました.
発達障害学生については,事前面談と特性把握,特性に応じた職場マッチング,ビジネスマナー等のインターンシップ準備講習,5日間の企業でのインターンシップ,振り返り,といった内容を実施しました.
他方,企業側にはついては,事前説明,業務の切り出し,発達障害特性とその対応の説明,インターンシップの受入,振り返り,といった内容を実施しました.

私が特に今回重要だと思うのは(1)(2)と(3)の繋がりについてなんですよね.つまり,大学から企業への繋がり方,なんです.

従来の障害学生就労支援って,在学中のメニューが本当に限られてるんですよね.まあ,言ってしまえばほとんど座学です.座学でできることも多いけど,教育って座学だけではないですし.特に就労については,実際やってみないことには分からないことが多いんです.キャリア教育って,座学だけでは限界があるというのが私の考えです.

私は在学中のド短期インターンシップって就労支援にすごく効果的だと思っています.

発達障害のある人の就労の問題は,障害特性と関連する問題と,経験不足等の2次障害に関連する問題があり,後者が前者に比べてなおざりになっている,というのが障害学生支援および職リハにおける問題だと思っています.

発達障害のある人の就労問題は,大雑把に書くと「就職できない」「何とか就職してもすぐ辞めざるを得なくなる」事がほとんどです.で,これは就職段階になってはじめて明らかになるんですよね.本来は就職前にそうなる原因を取り除いておくことができればベターだと思っています.で,ちゃんとやればそれはできるんだと思っています.

やってみないとわからないことがあるなかで,卒業してからしかやれない,というのが問題です.失敗したらそこからリカバーしにくいんです.だから,大学生や高校生という肩書きと戻る場所があるうちに,「大けが」しないようにしながら経験を積むというのが問題の解決策になるのではないかと思っています.

アルバイトでいいんじゃないの?と言われそうですが,アルバイトのハードルが高いんですよね.アルバイトの面接に通らなかったり,上手くいかなかったというネガティブな経験だけを積んでしまう場合が多いんです.なので,障害特性に応じて支援を受けられるインターンシップがあればベターだと思います.

あと,職リハというのの問題ですが「企業が失敗しながら学ぶ」という機会を作ってこなかったのが大きな問題だと思っています.企業側の論理として,障害者雇用に二の足を踏むのはリスクが大きすぎるからです.一度雇ったら失敗できない(クビにできない)ので,雇わないという選択になる.というわけです.従来の企業側に対する職リハのアプローチというのは「それは誤解なんです,雇って下さい」というお願い型なんですよね.もちろん,ジョブコーチなどの援助付雇用制度というのがありますが,あれは雇うことを決めてからの制度なんですよね.雇うかどうか決める前でのアプローチがないわけです.

そういうミスマッチを解消する方策として,ド短期のインターンシップが果たして有効なのかどうかと言うのが今回の研究の最後のポイントでした.

実際やってみると,学生側は「また参加したい」と回答するし,企業側は「こんな感じならまた来て欲しい」と回答するわけです.もちろん,小さなトラブルは多々あります.それをジョブコーチが間つなぎするわけです.

最初は企業側もどうしていいか解らず,お客さん扱いで,提供する仕事も簡単な作業ばかりです.それが2回めになると,企業が出してくる職務の幅が増えてくるんですね.企業側も学習して変わってくるわけです.

こういう仕組みが大切なんだと思います.

前回の大会に参加したときに,大妻女子大の小川浩先生に「僕たちの世代は,就労支援のための制度を作ってきた.だから,きみたちの世代は次のことをやって欲しい」と言われました.また,前回の大会の基調講演では「障害者側だけじゃなくて企業側を助ける職リハをやらないとだめだ」といった趣旨の提案がありました.特性に応じた支援を,というのは職リハや特別支援の研究領域ではもはや当たり前です(現場への浸透は不十分だとは思いますが).なので,研究として,どう次の事をやるかということを考えた1年でした.来年はどんなことしようかなー.