ヒューマンインタフェース学会 第9回研究会賞をいただきました

昨年の5月にSIGCEで発表した研究「コミュニケーションが困難な発達障害のある学生の学習支援−テクノロジーの利用と環境調整による支援効果の事例的検討−」を評価していただき,なんと賞をいただいてしまいました.これを励みに,ますます研究に精進しなければなりません.身が引き締まる思いです.

この研究はある1名のコミュニケーションが困難な発達障害のある大学生の事例を元に,その支援の可能性をエビデンスベースドで探るための方法について,いろいろなアセスメント手法を組み合わせて調べたものです.

実際の障害学生支援の現場では,ひとりひとりの困難をアセスメントするような余裕がないのが多くの大学の現状です.本来であれば,丁寧な聞き取りを行い,認知機能検査を実施し,個別のニーズを探りながら配慮を検討するというのが理想ですが,なかなかそうはいきません.まず,コミュニケーションが困難な人にとって,相手がいくらニーズを丁寧に聞き取ろうとしても,なかなかそのニーズを説明することが困難です.説明することの困難さに加え,そもそも自身がニーズに気づいていない場合があるからです.また,学生支援の専門家とはいえ認知機能アセスメントの専門家でない場合がほとんどなので,特に発達障害の認知的な困り感を調べることは難しいのが現状です.

では諦めるしかないのか,といえばそうでもないよということを示したのが本研究です.本研究では上記の参加者に知能検査WAIS−Ⅲを実施したうえで,そのプロフィールと大学での成績を比較しています.実は大学の成績表は支援ニーズを探るうえでかなり有効な手がかりを提供してくれるということを本研究結果は示しています.成績順に受講科目を並べ替え,得点の高い科目と低い科目を比較すると,実はその講義のテーマではなく,配付資料の有無や,課題のタイプ(試験か,レポートか,等),評価方法による成績への影響が一番大きいということがわかりました.

どういう条件において成績が悪くなるということがわかれば,それが必要な支援のヒントになるわけです.本研究ではさらにそこから導き出された支援の可能性について,支援技術を適用してどこまで支援可能かということをエビデンスを基に検討しました.

詳しくは以下の論文をお読み下さい.

岡耕平 (2012). コミュニケーションが困難な発達障害のある学生の学習支援ーテクノロジーの利用と環境調整による支援効果の事例的検討ー ヒューマンインタフェース学会研究報告集, 14(3), 167-172.