障害者基本法の一部改正について
8月5日,障害者基本法の一部を改正する法律が公布されました.
改正内容の詳細については,以下のウェブサイトから情報を得ることができます.
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/kaikaku/s_kaigi/k_34/index.html
ここでは私が特に注目した大きな変更点を3つ紹介したいと思います.
1)そもそもの障害者基本法の「前提」が変わった
これまでの法律では「障害者と非障害者を分けたうえで」障害者の自立と社会参加を支援することが目的だったわけですが,改正法では「障害があろうがなかろうが,そもそも一人の個人として尊重されるのが当然とされたうえで」自立と社会参加を支援するということになっています.これは「障害」というもののとらえ方そのものが変わったことを意味しています.
2)「障害者の定義」が変わった
従来の身体障害,知的障害,精神障害という枠組みの中で,これまで含まれてこなかった「発達障害」が新たに精神障害の枠組みの中に含まれることになりました.また,「障害」のもつ意味の中に「社会的障壁」という考え方が追加されました.これまでは障害というと,個人の身体のどこか(たとえば筋肉や,神経や,脳など)がそもそもの障害の原因であるという考えが主流だったのですが,改正法ではその人と社会の間を阻害する壁が「障害」であるという考えが追加されました.
3)「合理的配慮」の考え方が新たに導入された
これまでは単純に「 障害を理由として差別することや権利利益を侵害すること」が禁止されていただけだったのですが,これに加えて「社会的障壁を取り除くために合理的な配慮」がなされなければならないということになりました.合理的配慮とは,ある人が自立や社会参加をするうえで今の条件ではそれ(たとえば就学や就労)が難しいとき,可能な範囲で自立や社会参加ができるように,できる限り合理的に環境や条件を調整するという配慮です.改正法ではこの「合理的配慮」をしないことは違法であるということになりました.
これら3つをあわせて実際にどのように変わるのか考えてみます.
これまでは障害者手帳を持っていない人は障害者として支援の対象にならなかったのが,今後は手帳の有無というよりはむしろどのような自立/社会参加の困難があるかということを踏まえて支援の対象になるということが予想されます.もちろん,サービス提供にある程度の線引きは必要でしょうから,当面の間は手帳の有無がその線引き基準として使われると思います.しかしながら,その手帳の取得に関する障害の定義が広がり,発達障害が含まれるということで,支援を受けられる人の裾野は広がることと思われます.また,これまでは,特別支援教育や障害者雇用の場面では,とりあえず「受け入れる」ということが受け入れ側のとりあえずの最低ライン義務でした.しかし今後は受け入れた上で,さらにその人に応じた合理的配慮を提供することが最低限度必要になります.
このような改正は,障害のある人(生活にいろいろと困難のある人)のますますの自立や社会での活躍の機会が増すことにつながるものです.支援に携わる人にとっては,考え方を変えていく必要があるかもしれません.自分が支援に携わる人が,自立し社会参加するために必要な合理的配慮が何か,きちんと考えられるようにならないといけないからです.支援者としては,改めて自分の提供している支援について考え直すいい機会ですね.