神経衰弱

Posted by Kohei on 11月 8, 2011 in iPhone APP, 思いつきコラム |

長男(3歳6ヶ月)がiPadのひらがな学習アプリの中に入っている神経衰弱ゲームに夢中になっている.
長男がこのゲームをやっているのを観察していると,おもしろいことがわかる.

長男はこのゲームが大好きなのだが「ルールをほとんど理解していない」のである.

長男が理解していることと理解していないことは以下である.

理解していること
・タッチすればカードをめくることができる.
・2つのカードをめくって一致すれば「良いらしい」(完全には理解できていないようだ).

理解していないこと
・自分がめくる順番とコンピューターがめくる順番が交互にあるということ.
・そもそも自分がコンピュータと対戦しているということ(気づいていない).
・ひらがな(読めない)

これでよく楽しく遊べるものだ,と感心する.
↓ これがその一部始終の動画(12.5MB)なのだが,見ているとさらにいろいろなことに気づく.

神経衰弱(6分30秒.12.5MB)
(解像度のもう少し高いもの(41MB)を見たい方は.m4vの前に2を入れてください)

・記憶の容量が小さい
・合理的なストラテジー(戦略)を使っていない

全くランダムにめくっているかというとそうではない.
それなりに同じ「絵柄」をめくろうとはしている.ただ,拙い.
動画を見ていると「いや,そこはさっきもうめくったところ!」とか「1回目は安全策としてめくられてない方のカードからめくった方が良いよ!!」とアドバイスしたくなる.でもぐっとこらえる.

ルールを教えこみたくなる.
戦略を教えたくなる.
効率が悪いことをしていれば「そのやり方は良くない」と言いたくなる.
手本を見せたくなる.
これが○○って字だよ,と教育したくなる.
「そこさっきめくったでしょ!?」と注意したくなる.

でも,しばらく見ていて考えさせられた.

「理解していなくても」できることがあるんだ.
「できなくても」楽しめるんだ.
「論理が理解できない人」が『ルール』をそれなりに学習できるんだ

基本的に心理学の世界では,人間がある目的を達成するためには「ゴール(目的)と現在の地点を把握し,ゴールに至る道筋を分析したうえで,適した手段を選択すること」が必要だと考えられている.なので,課題を分析し,行動を分析したうえで,問題があれば課題や行動をどう修正するか考えていきましょうということになる.

けれども,うちの長男を見ていると,そういうことだけじゃないよなと思う.

古くさい概念だけど,やっぱりヴィゴツキーの「最近接領域」の考え方は重要だなと思う.
最近接領域というのはものすごくザックリと説明すると「その人の能力の限界のほんのちょっと外側」で「自分一人ではできないけれども,誰か(大人)に手助けしてもらえれば,自分でそれができる」領域のことである.物理的な面積や容積を指すのではない.「能力の範囲」のことである.ヴィゴツキーは,子どもは最近接領域にふれてその領域を自分の能力として「内化」する(取り込む)ことで,自分の能力の範囲を拡張すると考えた.シンプルな概念なので,何となく解ったような気になりやすい概念ではある.もちろん,曖昧なので何がどうなったらそうなのかという部分については疑問も残る.しかしこの最近接領域の概念は,ひとつのわかりやすい子どもの学びの促進方法を提案してくれる.つまり,子どもの学びを促進するためには子どもが最近接領域に触れる機会を増やせば良いということになる.

長男にとって,あのゲームはちょうど最近接領域なのだろう.動画では私は手伝っていないが,もちろんそのゲームを触らせたり,最初の頃に何となくやり方を見せて手伝った.
もちろん「あれが最近接領域だ」なんてのは根拠がないし,トートロジー(同じことを別の言葉で言い換えているだけ)のような気もする.

ただ思うのは,人間の学びというものを考えたとき,もうちょっと別の視点がいるよなあということなのだ.
できる人からすれば,できない人の行動は本当にじれったくて,どうしてそんなことするんだと理解しがたいもののように感じてしまう.
かつて自分もできない側の人間だったはずなのに,いざできるようになり時間がたつと「できる」と「できない」に大きな溝が生まれてしまう.

長男を見ていて思うのは「できる」とか「できない」とかそういうのじゃないんだなということである.
「学ぶ」ことと「(理解)できるようになること」は同じか極めて近いものだと思っていた.
けれども今はちょっと違うんじゃないか?と思っている.

障害のある人の支援を考えるとき基本的に,できないことをどうやってできるようにするか,ということがベースになる.
でも,上のことを踏まえると,それは実はちょっと違うんじゃないか,という気がしてくる.

じゃあ,どうすれば良いんだと言われると,自分の中でうまく答えは出せていない.
なやましい,こそばゆい感じである.

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