特殊教育学会で研究成果を発表してきました

少し前の話になりますが,9月24日,青森県の弘前大学で開催された日本特殊教育学会第49回大会にて研究成果を発表してきました.報告した研究タイトルは「発達障害のある人のインターネットを介したコミュニケーションの問題と支援」です.

 発達障害のある人のなかには,対面コミュニケーションに困難を抱える人が少なくありません.一方で,電子メール,Weblog,SNS等のインターネットを介する非対面・非オンタイムコミュニケーションを介して,同じ趣味や興味を持つ人たちと交流を深める発達障害当事者もおられます.また,生活場面に限らず,就労場面でも対面コミュニケーションの困難を,電子メールを介することで回避する当事者もおられます(岡・近藤・中邑, 2010).このように,対面コミュニケーションが困難な人にとって,インターネットは有効な支援技術となります.ところが,コミュニケーションが苦手な人の中には,上記の例と異なり,「コミュニケーション自体は好きだが,コミュニケーションがうまくとれない」といった困り感をもっている人たちも多くおられます.インターネットが上記のような人に有効な支援技術であることは疑いないのですが,一方で,トラブルが起こった際の具体的な支援のノウハウが無く,同じ人が,引き続き同様のトラブルに巻き込まれ,辛い思いをするケースが多いというのが現状です.今回報告した研究では,コミュニケーション好きにも関わらず上手くいかず困っている発達障害のある人を対象として,実際に生じたトラブルの事例を時系列に沿って整理することで,そのトラブルの原因と,トラブルを防ぐための支援の可能性について検討しました.
 インタビューの結果わかったことは,(当たり前ということは承知の上であえて書きますが)まず,ミスコミュニケーションは発達障害のある人の特性だけで生じるものではないということです.こうやって当たり前のことをあえて書くのは,現在の世の中であふれる「KY」「コミュ力」と言った用語が,相互作用というよりむしろ個人の能力のみをターゲットとしているからです.本結果の要点は,当事者のみに非を求めず,むしろ相互作用の困難を原因として捉えることです.本研究では,どのようなタイミングでどのように対応することができればトラブルが防げるかということを,コミュニケーションに関わる本人と相手との関係を踏まえて提案しました.結論としては,トラブルが生じた際には中立的第3者の介入も含め,ミスコミュニケーションが生じた点について一つずつ修正していくことが有効です.このように「相互作用」を中心に捉えればミスコミュニケーションの事前回避と,適切な事後対策が,SNSでのトラブルの対策として見えてきます.

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